道路の管理
道路の管理
「道路の管理」とは、道路法等の法令に起因する道路の管理全般を示します。道路の新設、改築、災害復旧、維持、修繕等を行い、占用の許可をし、道路のための公用負担を課し、沿道制限を行い、道路標識の設置を行う等はいずれも管理の内容に含まれるものであり、それらの作用の性質から分類すれば、占用許可、承認工事の承認などの公法上の行為、敷地の売買契約などの私法上の行為及び道路の新設工事などの単なる事実行為の三種に分けられます。
道路管理権
道路管理権とは、道路の管理を行う道路管理者の権能をいいます。
内容
道路管理の内容には、一般交通の用に供する施設としての道路本来の目的を達成するために行う新設、改築、維持、修繕等の積極的作用と、道路の目的に対する障害の防止、除去その他の規制等 の消極的作用とがあります。後者は、道路管理権の作用として行われるものも多いですが、道路警察権の作用としても行われるので、両者の調整を図る必要があります。
道路管理の内容の概略を示すと、次のとおりです。
- 道路の新設または改築
- 道路の維持、修繕または災害復旧
- 道路の区域の決定または変更及び供用の開始または廃止
- 有料の橋または渡船施設の設置、管理
- 自動車駐車場の駐車料金及び割増金の徴収
- 道路台帳の調製及び保管
- 道路の占用の許可及び占用料の徴収
- 沿道区域の指定及び制限
- 道路標識等の設置
- 通行及び車両の禁止または制限
- 土地の立入り、一時使用等の公用負担
- 違法放置物件及び長時間放置車両に関する措置
- 監督処分
道路台帳
意義
「道路台帳」とは、道路管理者が管理する道路についての基礎的事項を記載した台帳です。道路及びその沿道については、種々の公法上の規制が働くため、その基礎的事項を明らかにしておくことは利害関係を有する私人にとって必要ですし、また一方で、道路管理者にとってもその管理事務を円滑に遂行する上で、道路の区域、道路の構造、占用物件等の道路管理上の基礎的事項を総括して把握しておくことが必要です。道路台帳の制度は、このような 趣旨に基づき設けられたものです。
しかし、近時は、地方交付税の交付の算定基礎に使われる等、道路の現況を把握する面を重視して運用される傾向にあります。
調製及び保管
道路管理者は、自ら管理する道路について、道路台帳を調製し、これを保管しなければなりません(法28I)。道路台帳の記載事項その他その調製及び保管に関し必要な事項は、国土交通省令で定められています(法28Ⅱ、施行規則4の2)。
閲覧
道路管理者は、道路台帳の閲覧を求められた場合においては、これを拒むことができません(法28Ⅲ)。
管理権の及ぶ範囲
道路管理権が行使される範囲は、道路区域、沿道区域及び道路予定地であります。それ以外の場所であっても、土地の立入り等道路管理権が行使される場合もあります。
道路の範囲は、平面的には道路区域の決定により定まり、立体的には、通常は、支壁その他の物件の存する部分はもとより、道路の区域の全般にわたり、道路の構造の保全、交通の危険防止その他道路管理上必要な範囲と解されます。
なお、法47条の6の規定により、道路 の立体的区域を設定する場合は、空間又は地下に上下の範囲を区切って定められた立体的区域とすることができます。
権原の取得と道路の範囲
道路が道路として成立するためには、供用開始行為が必要であり、供用開始行為が有効に成立するためには、その前提として、道路管理者は、道路の範囲となるべき部分について、所有権その他の権原が取得されていなければなりません。
他の道路との関係
路線の重複
国道の路線と都道府県道または市町村道の路線とが重複する場合においては、その重複する道路の部分については、国道に関する規定が適用されます(法11Ⅰ)。
都道府県道の路線と市町村道の路線とが重複する場合においては、その重複する道路の部分については、都道府県道に関する規定が適用されます(法11Ⅱ)。
境界地
地方公共団体の区域の境界に関する 道路については、関係道路管理者(国土交通大臣である道路管理者を除く。)は、協議してその管理の方法を定めることができます(法19I)。
立体交差
立体交差している道路については、法11条の適用はありませんが、関係道路管理者は、協議してその管理の方法を定めることができます(法19の2)。
他の公共施設との関係(兼用工作物)
管理協定
道路と堤防、護岸、ダム、鉄道または軌道用の橋、踏切道、駅前広場その他公共の用に供する工作物または施設(以下「他の工作物」といいます。)とが相互に効用を兼ねる場合においては、当該道路の道路管理者及び他の工作物の管理者は、協議して当該道路及び他の工作物の管理の方法を定め、並びにその管理に関する費用について、その分担すべき金額及び分担の方法を定めることができます。ただし、他の工作物の管理者が私人である場合においては、道路については、道路に関する工事及び維持以外の管理を行わせることはできません(法20·55)。
権限代行
協議に基づき、他の工作物の管理者が道路を管理する場合においては、その者は、当該道路の道路管理者に代わってその権限を行います。ただし、次に掲げる権限は行うことはできません(法27Ⅲ、施行令5)。
- 道路区域の公示
- 道路台帳の調製及び保管
- 沿道区域の指定及び公示
- 道路一体建物協定の公示及び閲覧等
- 利便施設協定の公示及び閲覧
- 道路保全立体区域の指定及び公示
- 市町村分担金の負担命令
不服申立て
協議に基づき、他の工作物の管理者が道路管理者に代わってした処分に対する不服申立てについては、特別の定めがあります(法96Ⅲ)。(第16章参照してください。)
権限の代行・委任
代行・委任
道路の管理は、道路管理者の権限及び義務に属し、他の者が関与しないのが原則ですが、道路法その他の法律により、次のような場合には、道路管理者の権限の代行又は委任が認めら れています。
この場合、代行者は、道路管理者の地位に立ち、その限りにおいては、本来の道路管理者は権限を行使できず、また代行者を指揮監督できません。これに対し、受任者は、その委任の範囲内で自己の権限として、自己の名と責任においてその権限を行使するが、委任者は受任者を指揮監督できます。
国土交通大臣は、指定区間外の一般国道の新設、改築又は災害復旧を行うことができますが、この場合には、国土交通大臣は、道路管理者の権限の一部を代行します(法12・13Ⅲ・27Ⅰ、施行令4・6)。
国土交通大臣は、指定区間内の一般国道の維持、修繕及び災害復旧以外の管理を当該部分の存する都道府県又は指定市が行うこととすることができます(法13Ⅱ、施行令1の2~1の4)。
指定市以外の市町村は、都道府県の行うこととされている歩道の新設等の一部を行うことができますが、この場合には、当該市町村は、道路管理者の権限の一部を代行します(法17Ⅲ・27Ⅱ、施行令4の2・6)。
地方公共団体の区域の境界に係る道路については、関係道路管理者は、協議して別に管理の方法を定めることができ、この場合には、管理を行う道路管理者は、他の道路管理者の権限を代行します(法19・27Ⅱ、施行令5)。
道路と他の公共施設とが相互に効用を兼ねる場合には、当該他の施設の管理者と道路管理者とが協議して、別に管理の方法を定めることができ、この場合、当該他の施設の管理者が道路の管理を行うときは、当該者は道路管理者の権限を代行します(法20・27Ⅲ、施行令5)。
道の区域内の一般国道については、国土交通大臣が道路管理者の権限の全部を行 い、いわゆる開発道路については、国土交通大臣がその全部又は一部の権限を代行します(法88Ⅱ、施行令34)。
国土交通大臣の権限は、その一部を地方整備局長(沖縄総合事務局長を含む。)又は北海道開発局長に委任することができます(法97の2、施行令39、内閣府設置法44Ⅰ・45I)。
国土交通大臣は、指定区間外の一般国道の修繕をすることができ、この場合には、国土交通大臣は道路管理者の権限の一部を代行します(道路の修繕に関する法律2、同法施行令7)。
会社、機構及び地方道路公社は、国土交通大臣の許可を受けて、高速道路等の新設、改築等を行うことができ、この場合には、道路管理者の権限の一部を代行します(道路整備特別措置法3Ⅰ・4・8・9・10I・12I・14・15I・17)。
また、独立行政法人都市再生機構は、道路管理者の同意を得て、その管理者に代わってその工事を行うことができます(独立行政法人都市再生機構法18Ⅰ・Ⅱ。この中には、共同溝及び電線共同溝についての権限代行も含まれています。)。
管理の委託
事実行為としての道路の管理は、第三者に委託することができます。法律上の権限については、法律に特別の規定がなければ、第三者に任せることはできません。
道路外利便施設協定
道路の区域外に存する並木、街灯等で道路の付属物と同等の効果を発揮している工作物・施設については、道路外利便施設協定(法48の17)を締結することにより、当該工作物、施設の所有者等の協議の内容に従って、道路管理者が当該工作物、施設を管理することが可能です。
道路の維持・修繕の基準
道路の維持・修繕の目的
いったん供用開始が行われた道路も、その後の維持、修繕その他の管理が不十分では、その効用を全うすることができません。この意味において、道路の維持及び修繕は、道路管理者の重要な責務です。特に最近の自動車交通量の著しい伸びにより、道路管理者が維持・修繕を怠った場合には、単に交通の渋滞等を招来するばかりでなく、重大な交通の危険状態をもたらすことも少なくないことを銘記する必要があります。
道路の維持の定義
道路の維持とは、反復して行われる道路の機能を保持するための行為であり、撒水、除草、除雪、コンクリート の舗装の目地の手入れ、砂利の補充等をいいます。
道路の修繕の定義
道路の修繕とは、道路を新設し、または改築したときの構造が損傷したときに、これを原状程度に復旧することであり、オーバーレイ、舗装の打換等が含まれます。
道路の維持・修繕の基準
道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もって一般交通に支障を及ぼさないように努めなければなりません(法42)が、維持・修繕の具体的な基準は、政令に委任されています。この政令は未制定ですが、別途「道路の維持修繕等管理要領について」(昭和37年8月28日道発368号道路局長通達)により基本的方針が定められています。
なお、このほか、道路の維持・修繕に関しては、次の通達等を参照してください。
- 「道路工事執行要領について」(昭和37年8月7日道発331号・都発190号)
- 「異常気象時等における道路交通情報連絡活動要領について」(昭和52年5月10日道交発30号道路局長通達)
- 「道路交通法等の一部改正に伴う道路管理上の措置等について」(昭和53年12月1日道交発102号・道企発59号)
- 交通上の障害となっている路上放置車両の処理方法について(平成5年3月30日 道交発25号)
道路の維持・修繕を怠った場合
道路の維持・修繕に怠りがあり、他人に損害を生じたときは、道路管理の瑕疵として、国または地方公共団体は賠償の義務を負いますが、この点については、第16章3国家賠償(316頁)以下参照してください。
道路の災害
道路の災害に対する道路管理者の責務
道路管理者は、台風等の災害の発生が予知できる場合は、あらかじめ管理体制を強化し、関係諸機関との連絡を密にして、被害を最小限に留めるよう努めなければなりません。必要に応じ、道路モニター制等を活用することも望ましいです(「道路管理の強化について」昭和49年12月24日道交発56号道路局長依命通達等参照)。不幸にして災害が発生したときは、道路管理者は、速やかに復旧に努め、交通の確保を図らなければなりません。
道路の災害復旧の意 義
道路法上、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法2条2項に規定する災害復旧事業、すなわち、災害によって必要を生じた事業で、災害を被った施設を原形に復旧することを目的とするものを、特に「修繕」と区分して「災害復旧」といいます(原形に復旧することが不可能な場合において当該施設の従前の効用を復旧するための施設とすることを含む)。
道路の災害復旧の主体
道路の災害復旧の施行主体は、指定区間内の国道については国土交通大臣、指定区間外の国道については原則として都道府県・都道府県道又は市町村道については、それぞれ都道府県又は市町村です。なお、指定市、北海道の国道等に関する特例が認められています。
指定区間外の国道に関する災害復旧を国土交通大臣が行う特例
国土交通大臣は、工事が高度の技術を要する場合、高度の機械力を 使用して実施することが適当であると認める場合、又は都道府県の区域の境界に係る場合には、都道府県に代って自ら指定区間外の国道の災害復旧に関する工事を行うことができます(例新潟県中越地震)(法17Ⅲ)。この場合において、国土交通大臣は、あらかじめ工事を行う旨を当該都道府県に通知しなければなりません。
異常気象時及び災害時の道路管理
異常気象時及び災害発生時における報告及び連絡
道路管理者は、異常気象時の通行規制状況や災害発生時等の緊急事態における刻々の道路状況、気象状況等を迅速かつ的確に把握し、情報の伝達を確実なものとすることにより交通の危険を防止し、一般交通への支障を減少させ、あわせて災害復旧等を容易にすることが必要です。