第 21 条 [集会·結社·表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密]
- 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
- 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
(1)総説
Q: 表現の自由は、公共の福祉のみならず、特別な公法関係上または私法関係上の義務によっても制限を受けるのか。
A: :制限を受ける。憲法 21 条所定の言論、出版その他一切の表現の自由は、公共の福祉に反しえないものであること憲法 12 条、13 条の規定上明白であるばかりでなく、自己の自由意思に基づく特別な公法関係上または私法関係上の職務によって制限を受けることのあるのは、やむをえないところである(最大決昭 26·4·4)。
(2)アクセス権等
Q: 私人間において、反論文掲載請求権は、憲法上保障されているか。
A: 憲法上保障されていない。憲法 21 条等のいわゆ る自由権的基本権の保障規定は、国または地方公共団体の統治行動に対して基本的な個人の自由と平等を保障することを目的としたものであって、私人相互の関係については、たとえ相互の力関係の相違から一方が他方に優越し事実上後者が前者の意思に服従せざるをえないようなときであっても、適用ないし類推適用されるものでない。このことは、私人間において、当事者の一方が情報の収集、管理、処理につき強い影響力をもつ日刊新聞紙を全国的に発行·発売する者である場合でも、憲法 21 条の規定から直接に、反論掲載の請求権が他方の当事者に生ずるものではない。さらに、反論文掲載請求権は、これを認める法の明文の規定は存在しないくサンケイ新聞事件-(最判昭 62·4·24)。
Q: 反論権の制度は、表現の自由を侵害する危険性があるか。
A: 表現の自由を間接的に侵害する危険性がある。いわゆる反論権の制度は、名誉あるいはプライバシーの保護に資するものがあることも否定しがたいが、新聞を発行·販売する者にとっては、反論文の掲載を強制されることになり、また、そのために紙面を割かなければならなくなる等の負担を強いられるのであって、これらの負担が、批判的記事、ことに公的事項に関する批判的記事の掲載を躊躇させ、憲法の保障する表現の自由を間接的に侵す危険につながるおそれもある。このように、反論権の制度は、民主主義社会においてきわめて重要な意味をもつ新聞等の表現の自由に対し重大な影響を及ぼすものであって、たとえサンケイ新聞などの日刊全国紙による情報の提供が一般国民に対し強い影響力をもち、その記事が特定の者の名誉ないしプライバシーに重大な影響を及ぼすことがあるとしても、不法行為が成立する場合は別論として、反論権の制度について具体的な成文法がないのに、反論権を認めるに等しい反論文掲載請求権をたやすく認めることはできない-サンケイ新聞事件-(最判昭 62·4·24)。